日本スローワーク協会・カフェ事業 第一期総括
2005年7月20日(水) カフェ事業部部長 宮地 剛
以下、カフェ事業部の責任者としての個人的な中間総括です。
カフェ事業も、7月24日に現場での「墨出し」を行い、8月からようやく店内施工に入っていきます。また昨夜17日には、第一回「富田丘酒楼」を開催し、実際の営業の業務経験を積んでいく練習も開始されました。このように、実際のカフェオープンに向かって、着々と進んでいるようにみえるこの時期だからこそ、今までのカフェ事業の経緯を振り返って総括し、反省する点は反省し、また今後の課題を明確にして、その解決の方法を考え、実施していきたいと考えています。
便宜的に、今までをカフェ事業の「第一期」とします。
まず一番反省すべき点は、事業計画が未整理かつ曖昧な状態にもかかわらず進めてしまい、事業に興味を持ってくださった方々の「ご好意に甘える」形で、実に多くの方々を無批判に巻き込み、そこで常に発生する様々な問題点を事後的に解決する、という「場当たり的な」事業の進め方になっていた、というところです。
この問題を、資金調達の面から考えておきたいと思います。
当初、カフェを開店するという計画は、04年の10月くらいから水谷氏・宮地の「カフェスロー計画」にニュースタートも参加するという形で始められました。この時期での資金計画は、水谷氏・宮地・ニュースタートの供出で、総額500万円〜600万円を見込んでいました。この金額を前提として、物件探しを行い、一番目の候補であった「駐輪所の2階」に決めました。この段階で、カフェスローの吉岡氏からご紹介いただいた大岩剛一先生に、物件の測量をしていただき、実際にラフの図面も書いていただいています。
この時期での問題点は、物件がなかなか確定できなかったことです。特に宮地が、カフェ開店の目的を、カフェやパン屋営業だけでなく、イベントやライブ開催を通したNPOや市民のネットワーク作りにおいていたため、資金面を考慮することなく、ある程度の広さ(最低20坪以上)の物件にこだわっていたからです。「駐輪所の2階」は70坪近くありました。一階の広い店舗を確保するには最初から資金が不足していました。
またこの頃に、カフェ事業に福井氏が参加してくださり、福井氏の明確な資金計画の数字の検討作業と裏づけ作業で、資金計画がいまだ曖昧かつ未確定な要素が多く、事業自体が現実的なものになっていないということが判明していきました。
そんな状況にもかかわらず、「駐輪所の2階」で開店したいとなお宮地は考えていたのですが、実際にそこで開店する際に、どれくらいの「工事予算」が必要なのか、なかなか明確にできませんでした。NPO法人「ふくてっく」さんとの関係づくりによって、ようやく「駐輪所の2階」は営業物件としては重量構造的に不適格であると判断でき、水谷氏と福井氏が見つけてきたWESTビルの3階で開店することになりました。この段階でも、大岩先生に二度目の計測していただき二枚目の図面を書いていただいています。
ようやく店舗の見通しがついたこの段階で、まず一番最初にしなければいけなかったのは、自己資金の確定です。物件を決め図面を引いていただいているのに、資金さえ確定できていなかった点に、カフェ事業の進め方の問題点が集約的に現れていました。資金の確定は、3団体合同会議上でニュースタートからの資金提供の確約をいただいて、確定することができました。自己資金は「水谷200、宮地200、福井100、ニュースタート100」の「計600万円」と確定されました。
「自己資金」の予算配分は「物件取得費200、店内改装費200、設備・什器費、デザイン費など200」というものでしたが、運転資金の不足は明白で、それを補うため「ヒューファイナンス」に「300万円」の融資申込みを行うことにし、その連帯保証人を、サポートセンターの境氏にご紹介いただいたH氏にお願いいたしました。H氏は、初めて会った「おっさん3人組」の厚かましい申し出に対して、なんの質問をされることもなく、快く、了解してくださいました。
こうして、ヒューファイナンスに融資の申し込みを行い、形式的には、自己資金600万円、融資資金300万円の計900万円を確保することができました。その後、K氏から「50万円」のご融資を受け、「計950万円」の資金になりました。が、これは後述するように、あくまで形式的な資金確保でしかありませんでした。つまり実質的には、資金は未確定であった、ということです。
その後、再度物件の見直しの必要に迫られ、WESTビル3階から5階へと替わりました。大岩先生は、3度目の計測と図面引きをおこなってくださいました。現在、その図面を基にして、ふくてっくさんに基礎的な工事費用見積もりを算出していただいています。こうして、ようやく施工が始まろうとしています。(7月24日の「墨だし」から)。
しかしまた問題が起こりました。ヒューファイナンスの融資の可否が決裁されるまで、300万円の資金は未確定でしかなく、仮に融資が否決された時点で施工工事を開始してしまっていると、とたんに資金がショートしてしまうのです。しかしまた、ヒューファイナンスの融資可否は7月中に判明しますが、それまでに「墨だし」を開始しておかないと、実際の施工は8月の盆明けからになってしまい、またまた開店時期が遅れてしまいます。が、開店の遅れより、重要な問題は、ストローベイル工事に従事してくださる人々にかかる生活上の迷惑です。工事に参加してくださる皆さんは、本来の仕事のスケジュールを調整してCAFEコモンズの工事に参加してくださるため、これ以上工期を遅らせたり不確定なものにしてしまうと、生活上、多大な迷惑がかかってしまうのです。したがって、ヒューファイナンスの可否を待つまでに、「墨だし」が可能状態に資金を確定しておく必要がありました。このため、水谷、福井、宮地は話し合い、水谷氏が自己資金100万円、宮地が親に融資の申し込みをして200万円、合計300万円を、仮にヒューファイナンスの融資が否決された場合の保険的な融資資金として確保しました。この段階で、資金は、ようやく実質的に確定されたわけです。
しかし現状ではまだ、200万円ほどの施工資金が不足しています。これは運転資金の、開店資金への繰り入れなどで対応していきたいと思っていますが、その分の運転資金の不足分を、今後の資金調達活動で、補填していかなければいけません。
以上が、資金調達を中心にしたカフェ事業のおおまかな経緯です。資金調達の問題点に関しては、金銭面それだけで語ることができない要素も含まれています。それは、事業内容によって設備・内装などが決められるため、何をしたいのか、という内容によって必要な資金も変動する、という要素です。たとえば、石釜を設置するため、排気ダクトの施工費が予想以上に膨れ上がってしまった、といった要素です。しかし、資金不足だから石釜は要らないのだろうか?カフェの中で石釜は、どんな意味を持っているのか?など、いろいろと考えなければならない問題がありました。今回の資金計画の問題点の根底には、このような計画内容の曖昧さ・未整理さという問題が厳然としてありました。
ただ、第一期での一番大きな問題点は、多くの人たちが提供してくださった労力やボランティアに対するぼくたちの根本的な考え方の問題です。
たとえば、大岩剛一先生は、都合3度、物件を計測し図面を引いてくださっています。この点に関して、大岩先生からぼくたちがクレームを付けられたことは、一度もありません。またデザインをお願いしている創庵さんも、ぼくたちの提案している考えに興味を抱いてくださり「ボランティア価格」で仕事を引き受けてくださっています。それから「ふくてっく」さんは、自分たちの取り分を一切計上せず、ぼくたちの予算に収まるような工事になるように考えてくださり、業者と談判までしてくださっています。それから融資申込みのための連帯保証人を快く引き受けてくださったH氏。あるいは、ぼくたちの試みに賛同してくださり、ポンと資金を提供してくださったK氏。大岩先生を紹介してくださったカフェスロー国分寺の吉岡淳さんや、オープンミーティングの度に東京から駆けつけ親身なアドバイスをしてくださっているT氏。これから工事に参加してくださる「スローデザイン研究会」のみなさん。
これらの皆さんの「ご好意や善意」は通常の「損得勘定」だけのビジネスの世界では、到底考えられないことです。具体的に言うと、同じ規模と内容のカフェをビジネスとして開店するには、一坪100万円として、坪数25坪ですので通常2500万円は最低限必要です。それを850万円ほどの工事資金で開店できるとしたら、それは多くの人々の「ご好意と善意」による有形無形のご協力の賜物でしかありません。
しかし、それはNPOの事業だから、世の中のためになる「良いこと」をしているのだから「当然だ」と考えるべきではないと、ぼくは思います。ぼくたちは、大岩先生や創庵さん、ふくてっくさんのお仕事に対しては、本来正当な対価を支払うべきであるはずです。なぜなら、それが「カフェ事業」が経済的な活動であることの本質的なありかたであるからです。言葉を変えると、良いことであろうとなかろうと、自分たちがそれで飯を食っていこうとするならば、他人に対しても、飯が食える対価をきちんと支払うべきだからです。ぼくたちの運動が、経済的な運動である限りは、このようなことが可能になって、初めてカフェ事業は、「スローワークを目指す事業」と言えるのだと思います。
現段階で、それができていないのは、自分たちが「資金を調達できていない」から「事業計画が曖昧だった」だからであり、つまり「人の好意や善意」を暗黙のうちに前提とした事業計画であったからだ、と言わざるをえません。
この点が、今後の事業の見通しも含めて、大いに反省すべき点だと考えます。「人のご好意や善意」は大変ありがたいものです。しかし、それを前提としていては、経済的な運動としての事業の「社会性」は確立できないでしょうし、継続性や発展性もありえない、と考えます。
また、こういった人々の有形無形の好意・善意に対して、ぼくたちが仮に「彼らは、ぼくたちの理念に賛同しているんだから、それで当たり前だ」とか「ぼくたちは良いことをしているんだから無償ボランティアで協力して当たり前だ」と考えてしまうなら、ぼくたちの経済的な運動=事業の意味は変わってしまうように、ぼくには思えます。
それは「理念=良いこと」に「無償ボランティア」として「滅私奉公する」という運動形態に陥っていることを意味しています。しかしぼくたちの「理念=スローワーク」は、現実的な経済的な基盤の確立の上に成り立つもの、経済的な活動そのものが「理念=スローワーク」としてなりたつ、というものであったはずです。また、ぼくたちの運動は、そのような「理念=スローワーク=現実の生活」が可能になる経済的基盤と経済的文化的なネットワークを作っていくことが目的であったはずです。
現実の経済生活や活動、つまり生活していく生身の人間が働く事業であるという事実を無視し、「理念」に「滅私奉公する」運動形態に陥ってしまう罠に、当初からもっと慎重であるべきだったと、ぼくは思っています。つまり事業内容の明確化と、それを実現するために必要な資金の算出、そして資金の調達について、もっと具体的に検討し、実行しておくべきだったということです。
以上が、カフェ事業の第一期に対しての総括です。
そして、施工開始から完了、開店までの期間を、「第二期」とします。
第二期は、施工作業が中心になります。基礎工事は、専門の大工さんたちにお願いしますが、多くの部分をセルフメイドで作成していきます。そのため多くの人々の、工事への参加を募るつもりです。セルフメイド作業は、基本的にボランティアになりますが、それをどのような形であるにせよ、有償ボランティアとして「いくらか・なんらか」の対価を支払うようにしたいと考えています。現在の基本的な考えとしては、地域通貨を使うことです。
たとえば、
- 有償ボランティア参加希望者には、おおさかLETS、KYOTOレッツ、Qのいずれかに入ってもらい、LETSで対価を支払う。(開店後、コモンズで使える)
- 地域通貨の受け取りがいやな人には、CAFEコモンズの「割引券」を支払う。
というような方法で、無償ボランティアをなくしていきたいと考えています。
また開店後は、半年に一度は、経営状況や運営状況についての総括を行い、報告していきたい、と考えています。
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