カフェコモンズ:カフェコモンズはNPO法人日本スローワーク協会によって運営されているコミュニティー・カフェです。

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「カフェ・コモンズ」について

カフェ・コモンズ看板 カフェ・コモンズは、NPO法人日本スローワーク協会が2005年10月1日に、大阪府高槻市富田町に開いた、コミュニティ・カフェです。場所は大阪と京都のちょうど中間に位置する、阪急電鉄京都線「富田駅」とJR京都線「摂津富田駅」に挟まれた富田商店街のビルの5階にあります。

 店内の窓からは、富田の町並みや、遠くは、枚方(ひらかた)、京都の山並みを眺望でき、夜になると素晴らしい夜景を楽しめます。

 でも、なぜNPO法人がカフェを?

共有地としてのカフェ・コモンズ

 カフェ・コモンズは、NPO法人日本スローワーク協会が社会的課題と考えている、「雇用」「就労」「働き方」「仕事」などの問題について、問題意識や情報を共有・発信する場所として多くの方に利用していただくことを運営の目的としています。ミッションが営利目的ではないため、NPO法人(特定非営利活動法人)という形態をとっています。

NPO法人がカフェをする理由をお伝えしましたが、続けて店内の様子をご紹介したいと思います。

ストローベイルを基調とした居心地の良い内装

カフェ・コモンズ内装 カフェ・コモンズで、まず取り上げなければいけないのは、その居心地の良さです。来店してくださる多くのお客様が、店の居心地のよさを褒めてくださいます。カフェ・コモンズの居心地のよさは、そのストローベイルで作られている内装によることが大きいでしょう。ストローベイルを中心としたカフェ・コモンズの内装は、多くの人々の有形無形のご協力によって作られていきました。具体的には、

といった方々やNPO・NGO団体の協力によって作られています。

施工現場 大岩剛一氏は、ストローベイルという藁のブロックを積み上げ、そこに土を塗りこんでいくというストローベイル工法の第一人者です。コモンズの内装設計だけでなく、東京国分寺の「カフェスロー」の内装設計などストローベイルの建築を数多く設計監理されています。大岩氏のストローベイルへのこだわりには、シックハウス症候群に見られるような現代の工法がもたらす弊害への批判だけではなく、ストローベイル工法の普及を通して、大量生産大量消費に規定されている私たちのライフスタイルや価値観の具体的な見直しを実現するという意図があるように思われます。そして、大岩氏のそのような考えを具体的に実現していくのが、スローデザイン研究会で、そこには大岩氏の考えやストローベイル工法に共鳴している魅力的な若者が数多く参加されています。

 「NPO法人ふくてっく」は大阪市に本拠のあるNPO法人で、「福祉と住環境を考える」をテーマに活動されています。多くの一級建築士や工業デザイナーや介護士、福祉関係者が参加され、高齢者や障害者の方々が暮らしやすい住居というテーマをもとに、建築や住居を考え直し、より共生的な住環境を実現していこうとされています。具体的な活動としては、高齢者向けバリアフリーの住宅改修や福祉用具の開発などを行われています。カフェ・コモンズの基礎施工には、「ふくてっく」と施工会員である福祉・医療施設の新築及びバリアフリー・リフォーム工事を多く手掛けている株式会社大和建設が、カフェ・コモンズの理念に共鳴し協力してくださいました。

若者たち 実際の施工には、福祉やフェアトレードや環境問題に興味を持っている多くの市民や学生たちが参加してくださいました。また、引きこもりの若者への支援活動を行っている「NPO法人ニュースタート事務局関西」に集う引きこもりの若者たちも多く参加してくださり、ストローベイルの土塗り作業などを手伝ってくださいました。そのなかでも特筆すべきなのは、引きこもりであった一人の若者が、土塗り作業や内装作業を中心的に行うことで自信を持ち、自分自身の歩いていく方向を決定したことでしょう。具体的な仕事や作業経験のなかで、良くも悪くも他人に評価されることで、彼は自分自身のプライドを取り戻し、元気に働くようになりました。

 カフェ・コモンズの内装の居心地のよさ、暖かさは、このような多くの人々の参加による「セルフメイド=手作り」が醸し出していると言えるでしょう。

石窯と木質ペレット

石窯

 ストローベイルと並ぶカフェ・コモンズの象徴に、石窯があります。石窯も、ストローベイルと同様に、多くの人々の協力によって作られました。


設計・施工管理 竹下晃朗 石窯研究会

 竹下晃朗氏は、京都・修学院在住の石窯研究家です。現役時代エンジニアであった竹下氏は、独自の理論で、パン焼き用の石窯と製パン理論の普及活動をされています。竹下氏の製パン理論は、地域で栽培された有機栽培・無農薬栽培の小麦粉を使い、その小麦粉を「練らない」で作ったパン生地を、300度という高温で焼成するという点に特徴があります。この製法は、小麦の風味そのものを殺さないという点で、機械で練り添加物を大量に使用することを前提とした現在の製パン技術とは、まったく違うものです。

 竹下氏は日本全国で数多くの石窯を設計されていますが、私たちの理念を伝えると石窯の設計を快諾してくださいました。石窯の実際の組み立ては、耐火レンガや珪藻土レンガをひとつひとつ積み上げていって行いました。その作業にも、精神科医を目指す医学生や引きこもりの若者たちが参加してくださいました。

 また石窯の燃焼原料には、地元高槻市の森林組合が製造している木質ペレットを使用しています。木質ペレットは、間伐材や廃材を粉砕しペレット状に凝固したバイオマスエネルギーで、CO2を排出しないオルタナティブ・エネルギーとして注目されています。木質ペレットも燃焼するとCO2を排出するのですが、樹木は生長過程でCO2を吸収して光合成を行うので、CO2の収支がゼロである、つまりCO2を増やさないというエネルギーとして注目されています。ペレット

2018年6月18日発生大阪府北部地震による石窯崩壊と再生

                                    2020年2月26日 文責 理事 長井

高槻市の隣町に住む私はその瞬間思わず台所につかまり、久しぶりにちょっと大きな地震が来たと感じた。いつも通りに駅まで歩き、電車が止まっていると知る。遅刻だと思いながら家に戻り自家用車で向かう途中店に電話すると、仲間が何か叫んでいたがよくわからなかった。国道から窓ガラスが割れた店を時折見ながら渋滞の道を進み、着いてはじめて事態を理解した。
ビルの5階の店なので揺れは大きく様々なものが崩れていてもそれはやむを得なかった。ただ、やむをえないでは済まされないものが崩れていた。

地震直後の店内
    

倒壊前の窯
 

倒壊後の窯
 
店内は数日で片付いたが、石窯は…。内部を支える大きな鉄筋や重い耐火煉瓦を、皮肉にも崩れて初めて目の当たりにした。なかなか独創的な構造に見えた。設計された竹下先生は90歳を超えるご高齢だ。最初は、石窯は撤去しようと考えた。空いたスペースを他に使い新規に店作りするのが正統だろう。

しかし今まで皆で取り組んできたことは?

就労継続支援B型事業をこの店で行なっている私たちにプロの調理人はいない。できるだけ多くの方に関わってもらって給仕してきた、その原動力が石窯だった。レンガが放つ遠赤外線の力は電気オーブンを遥かにしのぐ。加熱条件を最初に決めれば誰が行なっても再現よく質を保つから素人でもできた。石窯で油煮したハンバーグは熱がいきわたり安全でかつ一番の人気メニューだ。油に沈めたサバを使い終わった石窯の中に一晩放置するだけで、余熱で骨まで食べられるやわらかい料理が生まれる。

さらに私たちは石窯でパウンドケーキを作り続けており、外部の店にも納品していた。またこの前年には守口市の市民団体「かたつむりの会」主催の焼き菓子グランプリでありがたく賞をいただき、自分たちの行なってきたことは間違いではなかったと喜び合ったところだった。これも多くの仲間が関われる大切な作業になっている。

自ら決断して取り組みを変えることはOKだ。しかし天災に降られてやむを得ず変わることはOKとはならない。

竹下先生ははじめ、誰からの電話かご理解いただけなかった。5年ほど前に石窯の点検に来ていただいたことが最後だった。電話とファックスでやり取りを繰り返した。ご自宅まで一時間半かけて足も運んだ。石窯の設計図は店にも先生の手元からもなくなっていた。新たに設計、材料を再利用して30万ほど費用はかかるか、木質ペレットの燃料をこの際コークスに変えるか、など話し合った。

先生以外に直接石窯作りを指導できる人が必要だった。先生が知り合いに打診されると「それどころではない」との返事。当たり前だった。修理を必要とする家はこの時期高槻市を中心に何千軒とあったろう。私たちは一時的に崩れたレンガをベランダに移動してブルーシートをかけていた。しかしこの光景は街のあちこちで見られた。大阪北部地震は本当の大震災と比べれば規模は大きくない。だがブルーシートは一年たってもあちこちの屋根に残った、地震の爪痕だった。工務店を営む兄にも聞いた。「左官屋さんなら石窯を作れる。ただ、2年待ちだろう」と。ネットには石窯作りの専門サイトもある。ただし重量をかけても大丈夫な、屋外でコンクリを打って重たい耐火煉瓦を積み上げる方法だ。ビルの5階に作る方法ではない。

石窯は使えないが営業は再開した。パウンドケーキを電気オーブンで焼いたが思うほど膨らまず食感も堅かった。外部への卸はやめて内部だけで販売した。肉料理も概ね小さく縮んでおり以前より落ちた。思えば先代から店を引き継いだ時に石窯はすでにあった。あるから使い始めただけで、最初から惚れ込んだわけではなかった。皮肉なことに石窯の良さを、失って初めて正確に理解できた。

設計だけでもなんとかならないか、と先生に再度お願いした。

結論は「できない」だった。

今回の地震を受けて、それでも崩れない構造はさらに重厚な建造物を要求する。しかしそもそもなぜ崩れたか。それは、店を代表して崩れてくれたのだ。もしも崩れなかった時の地震エネルギーの振り子の力はさらに大きなダメージを店に与えただろう。崩れてくれたから助かった面があるのだ。崩れない石窯を作ればそれが後の災害時には、店にさらなるダメージを与える破壊源になるかもしれない。

先生の指摘は正しいと感じた。結局、具体的な設計さえ出なかった。あきらめるしかないだろう、とある日とぼとぼと事務所に歩き、見ておいて、と言われていた働く仲間の面談記録を手に取った。

「地震によって店内の石窯が崩壊したため、石窯を中心に作っていた、料理やパウンドケーキができなくなった。そのせいもあってか調理へのモチベーションが下降気味。…石窯の再生への関わりを通じて先の見通しを実感できるようにしていきたい」
何度も繰り返し読んだ。鳥肌が立った。

あきらめる選択肢はないと感じた。思えば私はそれまで、ずっと頭で計算していた。大事な決断は頭でするのではなく心で決まる。働く仲間の思いは十分に心に響いた。
すると自然に、たった一つ、方法が思い浮かんだ。この店が初代から大切にしてきた方法だ。
セルフビルド。

そもそも崩れていい、スリムで軽い石窯を作ればよい。崩れても自分たちで直せるならそれでいいのだ。スリムで軽い内容ならば自分たちの設計と作業で何とかなるかもしれないし、自分たちで作るから自分たちで直せるものになるのだ…。

レンガの組み立て図を書き始めた。初代石窯の壁は二重でその間に骨となる鉄を挟み込んでいたようだ。二代目の石窯は壁を一重とする。鉄筋を加工して組み立てる技術など私たちにはないから、軽い珪藻土レンガの方を彫刻刀で削って鉄をはめ込む。レンガはすべて再利用。数を減らすから割れの少ないレンガだけピックアップできる。最低の強度はありそうな軽い鉄棒をホームセンターで見繕う。焼床の鉄は以前のものを再利用するが、縦横を変えて本数を減らし面積をスリムにする。その代わりに間口は端まで広げて最大限利用する。内部のレンガも軽い珪藻土レンガ中心とする。ただしそれだけでは石窯に赤外線効果は生まれない。重い耐火煉瓦を、バーナーの火が直接当たる付近に重点的に配置しよう。崩れてもよいが大きく崩れないよう外側四隅に鉄枠をはめる。また崩れても安全なように、この度の地震被害から新たに作られたガイドラインに沿って高さも下げる。本来石窯はアーチ型ドームが理想で天井に熱を滞留させるが、今回は最低限として一段だけ内部を高くしよう…。

もう一度だけ竹下先生のもとを訪れた。ただしそれまでとは違い、自作の石窯組み立て図と、石窯の再生に期待を寄せる仲間とを伴った。いくつもの指導をいただいた。

ここから先は店で働く全員で取り組む作業となった。はじめて石窯の底までレンガを取り除いた。床は表面を削りレンガがはまる溝を作っていた。このあたり見てみないとわからない。設計と施工は違うと痛感した。悩んだが、底面は珪藻土レンガに取り変えた。焼床用の鉄棒を一本一本調べると、一本だけ側面に筋が入っていた。その筋の中に温度センサーをかませていたのだとわかり再現した。その後も一段一段、予想と異なる状況が生まれたがその都度考えながら組んだ。3万円ほどの材料費で作り上げた。

レンガの積み上げ中        新しい窯
 
初めて火入れする日は消火器をそばに置いた。問題ないかケーキの焼き試験など繰り返した。ひとまずの完成として余ったレンガを片づけベランダからブルーシートは消えた。5か月後のことだった。

保温力が初代石窯よりやや落ちたこと以外は同じように使えた。いつ崩れてもおかしくないと思うが1年半たった今も大丈夫だ。

パウンドケーキの外部への納品を再開した。持っていくと歓声が上がった。そのお店にくるお客様から「あのパウンドケーキはまだないのか」と催促されていたのだという。再建してよかったと皆で言い合った。ベランダ側の席に着くお客様が多くなった。ブルーシートという地震の爪痕は今までお客様も遠ざけていたかもしれない。地震直後から来客数は減っていたが、このたびチラシ配りを行い以前と比べられるほどの数まで復活してきた。

かたつむりの会から電話をいただいた。2年ぶりに焼き菓子グランプリを実施するので参加しないかと。正直余裕はなかったが、前回に賞をいただいた恩もある。今回は他の団体様を盛り上げる脇役のつもりで参加すればよしとした。前回出品作に続き2番人気の「竹炭ココア」という真っ黒なケーキを出品、普段の販売のつもりで何も考えずに出向いた。黒のバンダナに茶色のエプロンを着て茶色のテーブルの上に茶色の盆を敷いて真っ黒なケーキを置くという、地味以外の何でもない売り方になった。それでも多くの方に買ってもらい大満足だったので、
「第三位、カフェコモンズ!」とコールされた時には唖然とした。一体何が起こったのか。他の20もの出品事業所はこの日のために菓子の開発もしただろうし、当日も華やかな出店でお客様の目も引いただろう。私たちはとりわけ何もしていなかったはずだ。

いや、一つ、頑張ってくれたものがあった。

石窯だ。

初代に引き続き賞をいただけたのは二代目石窯の実力だった。
結局私たちには、石窯と、心意気ある仲間がいるのだ。

地図

アクセス:
■JR京都線「摂津富田」駅下車、南出口より徒歩3分
■阪急京都線「富田」駅下車、北出口より徒歩2分
WESTビル5F

※高槻市周辺地図はこちらをご覧下さい(MapFanWebへリンク)

 

 
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